2017年1月1日より携帯電話販売店を対象とした「あんしんショップ認定制度」がスタートします。
受付業務における消費者の苦情などを減らすことを目的にした制度ですが筆者の感じた疑問点などをまとめました。
目次
あんしんショップ認定制度の概要
“あんしんショップ認定制度”は全国の携帯電話販売代理店153社で組織する”全国携帯電話販売代理店協会(通称 全携協)”が自主的に運用する制度で、主たる目的は携帯電話販売における消費者の苦情低減としています。
認定基準は「関係法令、ガイドライン、自主規制等を遵守すること」「消費者保護の精神を堅持し、業界の健全な発展に寄与すること」となっています。
対象となるショップはドコモショップ、auショップ、Softbankショップなどのキャリアショップのみで量販店の携帯電話コーナーや街角のケータイショップ(併売店)は対象外。ただし全携協に加盟する代理店が運営するキャリアショップだけでも全国で約7000店舗あり、その全てが制度の対象となるようです。
実際の運営は全携協に加えて電気通信事業者協会(TCA)や各キャリアの担当者、外部の有識者が参加し、総務省の担当者もオブザーバーとして参加することで制度の中立性や透明性を確保するとのこと。
認定されると冒頭に掲載したあんしんショップに認定されていることを示すステッカーが配布され掲出することで来店者にもひと目であんしんショップであることがわかるようにするようです。
認定自体も有効期限が1年間となっており、年度ごとに更新が必要とのこと。
以上が簡単な概要です。
筆者の感じた疑問
以下筆者がこの”あんしんショップ”制度に感じた疑問などを挙げていきます。
認定対象の店舗数が多すぎるのではないか
冒頭にも述べたとおり、認定の対象となる全国のキャリアショップの数は7000店舗。
この8500店舗全てを果たして本当に”安心できるお店”であるのか審査できるのか非常に疑問に感じました。
四半期ごとに認定の受付と審査を繰り返すとしていますが、4で割っても約1800店舗です。
携帯電話販売における消費者の苦情は多岐にわたり、審査会がその内容を全て精査の上適切に審査できるのか非常に疑問です。
実際に苦情は減らせるのか
2016年9月30日付けの毎日新聞の記事で、この制度の旗振り役の一人でもある野村総研の北プリンシパルは次のように述べています。
マークがあるお店なのにひどい応対をされた、とクレームがあれば、審査の上、場合によってはマークは剥奪される。その責任感と緊張感を受け入れるという覚悟の印である。スタッフは、マークがあるショップで働くことを、誇りに思えるようになるはずだ。
ご紹介した毎日新聞の記事では消費者の苦情の一例として、microSDカードの無断割賦販売や説明なしにオプションサービスを複数契約させること、そして端末値引きの条件として不要なサービスを複数契約させるいったことを挙げています。
では、そもそも何故このような苦情が生まれるような応対が出てくるのでしょうか。
実際に携帯電話を販売する側の視点に立った記事を見つけましたので紹介します。
この記事で述べられているのは最早携帯電話販売店は端末を販売するだけでは経営が成り立たないということ。
この記事で述べられているのは街角のケータイショップのことですが、キャリアショップでも同様なことが起きているのではないでしょうか。
SDカードを販売したり、オプションの案内をするのはお店が生き残るため。そういった視点が今回の制度設計には欠けていたのではないでしょうか。
北プリンシパルはスタッフがマークがある店で働けることを誇りに思えるようになるはずだ。と記事で述べていますが、マークが有ることでオプションの案内にも積極的になれずに結果として店舗の利益が減れば、当然人件費の削減と言うかたちで自身に返ってくるということが十二分に考えられます。果たして現在キャリアショップで働くスタッフの中でどれだけの方が
代理店の収益構造の改革なしにこういったあんしんショップの制度を開始したところで、早晩制度が崩壊するのではないか。筆者はそのように感じています。
消費者が求めていることは別のことなのではないか
ネット上などで上がっている苦情の多くは何よりも長時間待たされることであるのではないかと思います。
実際、土日のキャリアショップでは開店直後に来店した場合でも2時間待ちということがザラで、昼過ぎに来店した際には5時間待ちと告げられ口から泡を吹き出しそうになった経験があります。
確かに、Twitterなどで無断でSDカードの割賦を組まされていた〜などのTweetはインパクトも大きく拡散されやすいのでかなり目立ちます。
ただ、そのTweetが何千、何万とRetweetされて拡散されたところで元の苦情は1件に過ぎないわけです。
今、顧客が求めていることはそういったサービスの案内よりも来店してから長時間待たされることが無い店舗づくりや店舗配置なのではないでしょうか。
あんしんショップ認定制度の審査会には各キャリアの実務担当者も加わるとのことですが、労力をかけるところは別のところにあるのではないかと感じています。
行き過ぎた消費者保護は控えるべきなのではないか
数々の規制緩和を打ち出した小泉構造改革の後、消費者庁の設置など再び消費者保護を強化する流れになっています。
この”あんしんショップ認定制度”自体も消費者保護を目的としたものですが、筆者はこのような制度は消費者が自ら考え選択する機会を奪うものに過ぎないと考えています。
次から次へと新しいサービスや制度が打ち出される業界においては、こういった消費者保護を目的とした制度はどうしても後手後手に回りがちです。
販売店も最早生き残ることに必死という段階に入ってきています。
ほんの一握りの悪質な販売手法から消費者を守るのはお国や業界団体では無く、消費者自身の契約行為に対する意識ではないかと筆者は考えます。
制度づくりも大切ではありますが、消費者に対する注意喚起といったものももっとあっていいのではないでしょうか。
まとめ
実際に”あんしんショップ”制度が始まるのはこの記事を執筆した時点から3ヶ月も後の事になります。
このあんしんショップ認定制度が果たして消費者にとって安心できる店選びの基準になるかと考えるとそうではないと筆者は考えています。
あんしんマークと店舗の経営のどちらをとるかと迫られた場合、後者を選択する代理店が圧倒的に多いのではないでしょうか。
既に飽和している市場である以上、今後携帯電話販売店を待ち受ける未来は明るいものではありません。
そういった中で今後業界がどうなっていくのか注目しています。
筆者としては代理店の収益構造の改革こそ第一だと考えていますが、代理店だけではどうしようもない部分があります。
代理店に看板を貸し出すキャリア側が今後どのような対策を打ち出していくのか。それも重要なのでないかと考えています。
参考:あんしんショップ認定制度 | 一般社団法人 全国携帯電話販売代理店協会
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